ぶどうきゅうきんせいねっしょうようひふしょうこうぐん

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(Staphylococcal Scalded Skin Syndrome: SSSS)とは、黄色ブドウ球菌の産生する毒素によって発症する皮膚の病気です。

黄色ブドウ球菌そのものは皮膚などに広く生息する常在菌ですが、ときに伝染性痂疹(でんせんせいのうかしん)など皮膚感染症を起こすことがあります。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群では、皮膚が火傷を起こしたようなってしまい、全身の皮膚が影響を受けることになります。乳幼児によくみられますが、大人でも免疫機能や腎機能が低下していると発症することがあります。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は、早期に治療介入を行うことで重症化することなく治癒することも期待できます。

 

原因

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は、黄色ブドウ球菌の毒素を原因として発症します。ただし、黄色ブドウ球菌そのものが悪さをしているのでなく、黄色ブドウ球菌が産生する表皮剥脱毒素と呼ばれる毒素が発症の原因となっています。

表皮剥脱毒素は、皮膚表皮に存在するデスモグレイン1と呼ばれる構造をターゲットとするため、皮膚の浅い部位で皮膚がはがれ落ちます。また、表皮剥脱毒素は、血流を介して全身へと広がるため、全身性の皮膚障害が引き起こされることになります。

黄色ブドウ球菌自体は自然界において非常にありふれた菌で、人の皮膚や髪の毛、鼻の中などに常在しており、通常は何の悪さもすることのない菌です。

しかし、皮膚に傷ができたりするとその部位から黄色ブドウ球菌が侵入することで、伝染性痂疹や蜂窩織炎(ほうかしきえん)など皮膚感染症を起こすことがあります。

また、黄色ブドウ球菌はインフルエンザ後の肺炎敗血症などの重篤な病気の原因になることもあります。新生児がこの病気を発症した場合、おむつの接触部位やへその緒の周辺に初期病変が生じることが多いです。 

症状

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群を発症すると、微熱から38℃前後の発熱、全身の皮膚の赤みや痛みなどが現れるようになります。

病状の進行は比較的急速であり、それとわかる皮膚症状が出現する前に前駆症状として喉の痛みや結膜炎などの症状が現れることもあります。

皮膚は火傷のようにはがれ落ちることになりますが、特に皮膚が動く部位(口周り、おむつ周囲など)が影響を受けやすいです。表皮がはがれ落ちることで、びらんや液体成分の漏出などもみられます。特に、皮膚の赤い部分をこすると容易に皮膚がはがれ落ち、こうした現象をニコルスキー現象と呼びます。

皮膚がはがれ落ちることは、皮膚の防御機能が損なわれることを意味します。そのため、損傷を受けた部位から敗血症といった重篤な感染を合併することもあります。

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群では、適切な治療介入を行うことで治癒が望むことができます。しかし、免疫不全や腎疾患などのリスクファクター(危険因子)を有していると重症化することもあります。

検査・診断

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群では、皮膚所見を含めた臨床所見から疑われることになります。診断の際には、ニコルスキー現象の有無も有用です。

また、皮膚生検が行われることもあります。皮膚生検にて得られた検体を顕微鏡で観察することで、表皮の浅い部位(デスモグレイン1)に一致して皮膚がはがれ落ちていることを確認することができます。

病変部位の培養が行われることもありますが、毒素を産生している菌が病変部位にいるとは限らず、黄色ブドウ球菌が必ずしも検出されるわけではありません。

そのほかにも、血液検査にて白血球や赤沈などの炎症項目を確認されることがあり、診断の参考にされます。

治療

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群では、黄色ブドウ球菌に対して効果のある抗生物質を使用して、殺菌及び毒素産生抑制を目的として治療することになります。

近年は、特定の抗生物質に耐性を持つMRSAと呼ばれる黄色ブドウ球菌もあり、MRSAにも効果のあるバンコマイシン塩酸塩の使用も検討されることがあります。内服や点滴による治療に加えて、毒素産生をする黄色ブドウ球菌が定住している部位に対しての軟膏使用も検討されます。

皮膚の剥脱が重篤なことも多いため、脱水の進行や細菌感染の合併症を起こしやすくなります。そのため必要に応じて、脱水への対策、局所の皮膚処置(軟膏やドレッシング材の使用など)を実施することもあります。

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